
2025年10月16日

有限会社古沢商店
代表取締役
古澤 良彦
(Yoshihiko Furusawa)
関東の主要都市を結ぶ国道16号にほど近い、埼玉県さいたま市内で、古沢商店は長く地域に根を下ろしてきた。その歩みは、古澤良彦社長の祖父の代に始まった。
創業当時の家庭用エネルギーは、石炭や練炭が主力。暖房や炊事に欠かせない燃料を地域に届けるところから仕事が根づいていき、その後は肥料や米の配給、石油販売と、その時代ごとに暮らしに必要とされるものを取り扱い、地域の生活を支える役割を担ってきた。
1966(昭和41)年に法人化された後も、現在までその姿勢は一貫している。
「うちはその時代ごとの暮らしを支えるものを扱ってきたんです。昔は練炭や石油が中心だった時期もありました。そして、今はリフォーム、水回り工事、住宅設備販売、設備工事の方が多い。ガスだけに依存していたら、生き残れなかったと思います」と古澤社長は言う。


店に掲げられているウィンドウサインや看板は、現在はリフォームや工事がメイン
かつてはLPガス販売が事業の柱であり、ピーク時には現在の3倍以上の販売量を誇った。しかし規制緩和や都市ガスの普及により、需要は右肩下がりに。そこで、同社は早くから事業領域を広げ、現在では売上の7〜8割をガス以外が占め、地域の「何でも相談できる工事屋」としての存在感を確立している。
実際に、昭和の時代には個人営業のガス販売店は周辺に十数軒あったというが、今では姿を消し、残っているのは古沢商店だけとなった。時代によって変化する暮らし、地域の需要を見極め、取り扱う品目やサービスを広げていったことが、古沢商店の今日につながっているのだ。
こうした多角化を支えているのが、古澤社長自身の資格取得だ。建築・土木・管工事・電気・産廃関連など、現場に直結する資格を若いうちから積極的に取得。現在では29ある建設業許可のうち14業種を保有し、高額な大規模工事も請け負える体制を整えている。
資格の多さに、勉強好きなのですねと問うと、「いやいや、勉強が好きってわけじゃないんです」と、笑って答える。「資格は必要になってから取るのでは遅い。若い時に取っておけば、将来必ず役に立つから」。


数々の資格者証、許可証
古澤社長は、高校卒業後にガソリンスタンド、LPガスの直売の現場勤務を他社で経験した後、家業を継いだ。
「いろんな現場で、たくさんの職人さんと一緒に仕事をし、“こうやればいいんだよ”と教えてもらって、仕事のやり方は自然と身についていった」と振り返る。現場で技術を磨きながら資格の勉強も続け、知識と経験を同時に積み上げてきたことが、同社の“工事力”につながっていった。
「細かい仕事を断らない」が、古澤社長の営業哲学だ。
パッキン交換や蛇口修理といった数千円の作業でも即対応。こうしたことの繰り返しが、やがて大きな案件へと発展していく。
実際、ある顧客のトイレ修理をきっかけに、浴室・洗面・キッチンのリフォーム、リビングの改装、電動シャッター設置へと依頼が広がり、最終的には賃貸アパートの外装工事まで任されることになった。総額は千万円を超える規模に膨らんだという。
さらに、大学の中庭で排水不良が起きた際には、他業者が解決できなかった詰まりを解消。その後、外壁改修や防水工事など数千万円規模の大きな工事の受注へと至った。今では配管内視鏡カメラや高圧洗浄機といった専門機材も備え、他社が断るような難工事にも対応できる体制を整えている。小さな仕事から大きな案件まで幅広く応えられるまでになり、同社を支える大きな柱となっている。

2024年度の『エネ・ジョイ』カップとKing of Threeeの表彰盾、この他にも、社内にはこれまで参加してきたキャンペーンやイベントの表彰盾や賞状が並ぶ。
こうした姿勢は数字にも表れ、King of Threeeやエネアーク関東会が主催する『エネ・ジョイ』カップなどの機器販売キャンペーンでは、毎年常に上位に名を連ねる実績を残している。その強さの理由を尋ねると、古澤社長は「小さな仕事をきちんとやっていれば、『ここに頼めば何でもやってくれる』とお客様に思っていただける。それが一番の営業なんだと思う」と話してくれた。
単に“安さ”で売るのではなく、グレードの高い商品であっても自信を持って提案できるのも、知識と経験を積み重ねてきた同社だからこそ。「どうせなら長く安心して使える方を」と顧客にとって最適な選択肢を示す姿勢も、信頼につながっているのだ。
その販売力を評価され、近年は卸元のエネアーク関東から、エネファームの販売強化における先行事例となることが期待されている。災害時の電源確保やCO₂削減に貢献する次世代型エネルギー機器であり、「新しいものは使ってみないと本当の良さはわからない。挑戦し甲斐がありそう」と、意欲的だ。

同業の仲間たちからも「古澤さんのところならきっとあるはず!」と頼りにされている、各種の工具や機材がいっぱいの倉庫
知識と経験の豊かさに加え、新しいことに挑戦する前向きな意欲も持ち合わせている古澤社長の姿勢は、エネアーク関東会の活動においても発揮されている。会員同士が情報交換や研修を通じて切磋琢磨する場で、仲間を引っ張り、時に支え、頼られる中心的な存在の一人だ。互いに学び合える和やかな雰囲気をつくり出す姿は、同業者からも厚い信頼を寄せられている。
そうした人柄と実績があればこそ、古沢商店は地域にしっかりと根を下ろし、細やかな修理から大規模な工事まで幅広く応えてきた。古澤社長の言葉からは、目に見える分かりやすい営業戦略というよりは、日常の仕事の中で地道に周囲の声に耳を傾け続けてきたことが、同社の強みとなっていることに気付かされる。
これからも、顧客と地域、そして仲間たちの期待に応えつつ、その信頼を守り、挑戦を続けていく。