業界情報

LPガス存続の未来はあるかーー

今、LPガス事業者が考えるべき電化対応

エネルギー危機といわれる状況が続く昨今。脱炭素の潮流とも相まって再生可能エネルギーの開発がますます活発化し、電化の勢いは増すと見られています。そこで、エネルギー危機の現状と、今、LPガス事業者が考えるべきことを、環境エネルギージャーナリストの本橋恵一氏に伺いました。

エネルギー危機の本当の背景と要因

未だ先行き不透明のエネルギー危機。需給ひっ迫について、ロシアによるウクライナ侵攻が起因していると考えられがちですが、実は電力広域的運営推進機関が制作する需給計画から2018年の時点で電気と発電所の不足は予測されていました。当時不足の見込みがあるのにも関わらず対策を行っていなかったのは、電力自由化に向けた課題があったことと、容量市場の開設を行っていたためという背景があります。ただ、容量市場の開設によって2024年以降の電力供給は見込まれていたため、世界規模で急激な価格上昇は起こらないだろうと考えられていました。

また、2020年に化石燃料に対する見方が寛容であったIEA国際エネルギー機関もが脱炭素社会を目指すために、太陽光や風力、地熱などの再生可能エネルギーへと舵を切り出し、業界全体の流れが大きく変わったことも大きな要因となっています。金融業界にも影響を及ぼして化石燃料市場への投資が縮小し、石炭などの原料はあっても事業が継続ができない状況が続きました。

一方で、再生可能エネルギーによる発電などの設備や技術の対応は追い付いてはいないため、従来どおり化石燃料への需要は変わりません。これにより需要と供給側へのギャップが生まれてしまいました。需給のギャップを埋めるために再生可能エネルギーへ向けた投資を増やし動いていくはずでしたが、そこで起きてしまったのがウクライナ侵攻です。結果として、化石燃料の需要は伸び続け、物価も上昇してしまいました。ウクライナ侵攻のみが原因ではないものの、エネルギー危機に拍車を掛ける形となりました。

「容量市場」と「卸電力市場」

容量市場とは、実際に発電された電力量(kWh)を取引する 「卸電力市場」ではなく、将来の供給力(kW)を確保するための市場です。この将来の供給力(kW)を確保するため、海外でも既に導入されている 「容量市場」が、日本でも2024年から運用されます。

市場役割主な
取引主体
容量市場国全体で必要となる
(kW価値)の取引
広域機関
卸電力市場需要家に供給するための
電力量(kWh価値)の取引
小売電気事業者

再エネへの高まりと洋上風力発電

欧州のグリーンディールをはじめ、再生可能エネルギーへの投資が増えている中、日本では洋上風力発電への投資が進んでいます。
日本は、洋上風力発電に適した浅い海が少ないといわれていましたが、日本風力協会のデータによると1億kW程発電できるポテンシャルがあると試算されており、そのうち4500万kWは2040年までに案件化するといわれています。開発が進んでいけば、将来的には火力発電から洋上風力メインにシフトしていくとも考えられます。世界的に再生可能エネルギーによるエネルギー供給が可能となれば、2030年頃には化石燃料の高騰は落ち着いてくるのではないかという見通しがあります。

電化攻勢下でLPガス事業者にできること

ここでLPガス事業者として気になるのが、再生可能エネルギーへの移行による電化についてでしょう。やはりこのままいけば、ガスよりも電気の方が優勢になっていくといわざるを得ません。
プロパネーションなどによるグリーンLPガスの開発と実用にも期待がかかっていますが、生成時にエネルギーを使うことは避けられないうえ、現状の技術ではコスト面での課題が残されています。

とはいっても、急激に電化が進むというわけではありません。ですから、LPガスの販売を行いつつも、並行して電化攻勢に備え、シフトしていけるような営業をしていくのが賢明ではないでしょうか。
例えば断熱リフォームです。ガスや電気そのものの使用量を抑えるための提案ができます。また、リフォームには国からの補助金制度も豊富にあるので、案内もしやすいです。

また、お客様の脱炭素社会への関心も高まってきているので、ご家庭でのCO₂の排出量を何らかの機会を設けて明記し、消費エネルギーやCO₂排出量削減につながる提案ができる仕組みをつくるなどが効果的かもしれません。

地域のエネルギーをトータルで支える存在に

LPガス事業者というのは、地域に根付いた存在です。お客様からするとエネルギーにおけるパートナーだと考えられます。この信頼関係はとても大きなものです。今後の展望としては、電気やガスに関わらず地域のエネルギーを一括して担う存在としてお客様を支えていけたら良いのではないでしょうか。

エネルギーの地産地消は、スキーム作りができていないため現在では難しいですが、例えば海外ではコミュニティ・ソーラーというものがあります。コミュニティ・ソーラーとは、地域に設置された太陽光発電システムを共有するシステムで、ソーラーパネルの設置が難しいマンションやアパートにお住まいのお客様や、費用面で設置が難しいお客様でも太陽光発電の恩恵を受けることができる仕組みです。ガス事業者が太陽光発電所を設置し、運営。地域の電力消費者であるお客様は、ソーラーシステムを太陽光パネル単位(kW)で購入したり、一部の発電量を月単位で購入し、システムの一部を所有することができます。

コミュニティ・ソーラーで発電した電気は、家の屋根に設置したシステムで発電したのと同様にお客様の電気料金に組み込むことができるため、電気料金の支払いは発電した分を差し引いた分になります。日本でも導入に向け、注目を集めている仕組みです。

地元インフラを担うという使命のもとで、お客様とのつながりを大切に築いてきたことは、LPガス事業者の皆様にとっての強みであり、財産だと思います。だからこそできる柔軟な対応、お客様を離さないための仕組みを考えていくことが、業界の未来を存続させていくためのカギになるのではないでしょうか。

本橋 恵一

エネルギービジネスデザイン事務所代表
環境エネルギージャーナリスト/コンサルタント

1994年よりエネルギー専門誌「エネルギーフォーラム」記者。2004年よりフリーランス。2005年に環境エネルギー政策研究所にて地域エネルギー事業支援やグリーン電力証書を担当、2016-2017年に米・ENCOREDの日本法人マーケティング本部長。2019年からは脱炭素ニュースサイト「Energy Shift」「エナシフTV」の運営などを行う。


近著『図解即戦力 脱炭素のビジネス戦略と技術がこれ1冊でしっかりわかる教科書』 技術評論社 刊