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オーナーが今すぐ備えたいこと

賃貸住宅の防災対策

2024年元日、能登半島地震の発生は災害への備えが喫緊の課題であることを私たちに突きつけました。 自然災害が多発する昨今、賃貸住宅のオーナーは具体的にどのような対策を取ったらいいのでしょうか。 建物の耐震チェックなどに関するハード面、入居者に対しての意識啓発や情報伝達ほかのソフト面、両面から考えてみましょう。

入居者は安全な住宅を求めている

年明け早々から大きな災害が発生してしまった2024年。能登半島地震では激しい揺れで木造住宅が相次いで倒壊。その多くは1981年以前の旧耐震基準で建てられた建物とみられ、新基準の建物の被害は比較的小さかったといわれています。ショッキングな報道を見るにつけ、災害への備えの大切さを改めて認識させられました。当然のことながら、賃貸住宅の入居者も安全な住宅を求めています。SUUMOリサーチセンター「2022年度賃貸住宅契約者動向調査(首都圏)」によると、入居者が魅力を感じるコンセプト住宅の1位は「防災賃貸住宅」。前年の調査でも「防災賃貸住宅」が1位に入っており、入居者の意識や関心が防災に向いているということを物語っています。では、地域社会の一員として、また同時に人々に住戸を提供している賃貸住宅のオーナーとして、どのように災害に備えていけばいいのか、具体的に見ていきましょう。

ハード編 地域の災害危険度を把握し、建物の耐震をチェックする

ハザードマップで災害リスクを把握

賃貸住宅のオーナーはまず、所有物件がある地域の災害危険度を把握することから対策を始めます。国土交通省の「ハザードマップポータルサイト」から、全国の洪水、土砂災害、高潮、津波、道路防災情報がチェックできます。住所を入力し、リスク情報や土地の特徴などを重ねて表示、地図上の色分けによってリスクの度合いもわかりやすく閲覧できます。また、各市町村で作っている「ハザードマップ」(防災マップ)を入手して、内容を確認しておきましょう。自治体によっては「液状化マップ」を公表しているところもあります。あらかじめ登録
をしておけば、各市町村の防災気象情報メールサービスや、NHKなどの防災アプリでも情報を受け取ることができます。とくに防災アプリでは、河川の状況などをリアルタイムで把握でき、防災行動にたいへん役立ちます。スマートフォンをお持ちの方はぜひセットしておくことをおすすめします。やや専門的にはなりますが、「地震ハザードステーション(J‐SHIS)」、「活断層データベース」など地震災害に特化したデータベースを確認することも地域を知るよい機会です。チェックをしておきましょう。また、津波、土砂災害、水害の危険度は、賃貸契約締結の重要事項説明で、入居者に必ず説明しなければいけない事項でもあります。オーナーの責務として、必ず把握をしておきましょう。

建物の耐震チェックと避難通路の確保

古い建物はリフォームや建て替えも検討を

1981年(昭和56年)5月31日までに建築確認が行われた建物は、旧耐震基準に基づいて建てられています。旧耐震基準は、震度5強程度の中規模の地震を想定して建物に大きな被害がでないことを目安に定められていたのに対して、新耐震基準では、旧耐震の基準に加え、震度6強~7の大規模な地震の際にも、被害は受けるものの倒壊や崩壊はしない、つまり、人命に関わる損傷は生じないことをその目安としています。ちなみに阪神・淡路大震災と東日本大震災での最大震度は震度6強でした。近年は震度5を超える地震も頻繁に発生しているため、旧耐震基準の建物は地震に耐えられない可能性があります。この場合は耐震リフォームや建て替えを検討する必要があります。自治体によっては無料で耐震診断が受けられるところもあるので、あわせて活用するといいでしょう。

避難経路をふさぐものがないか確認を

アパートの通路などに自転車や荷物などが置かれていると日常はもちろん、災害時の避難の妨げになります。オーナーは避難通路に余計なものがないか、避難はしごなどがきちんと使える状態になっているか、日頃からチェックを怠らないようにしましょう。また、建物や通路だけではなく、外構の安全性も確認が必要です。老朽化したブロック塀が倒壊すると、けが人が出たり、避難経路が妨げられ二次被害につながったりすることも考えられます。地震等による倒壊を防ぐには、塀の中に鉄筋が配筋されている必要があります。よくわからない場合には、都道府県の建築士会などに相談してみましょう。

災害時にオーナーが責任を問われることも

建物が老朽化しているにもかかわらずメンテナンスを怠って災害による被害が出た場合は、オーナーは損害賠償請求を受ける可能性があります。防災面・安全面に配慮した建物の建築・管理を意識しておきましょう。

二次災害の火災を防ぎ減災を意識する

二次災害とは、一次災害を原因として連鎖的に発生する災害のこと。地震による火災や大雨による川の氾濫など、その範囲は広くなりますが、人の不注意によって発生する場合があり、普段の備えによって被害を減らすこともできます。
1995年(平成7年)に発生した阪神・淡路大震災では都市部で広がった火災のために被害が拡大してしまいました。大きな地震などが起きた場合、特に二次災害の火災に備える必要もあります。特に気をつけたいのは木造住宅が密集している地域、いわゆる木密地域です。東京都では、定期的に「地域の危険度」を調査、2022年には第9回の調査結果が発表になりました。町丁目ごとに「建物倒壊危険度」「火災危険度」、災害時活動困難度を加味して総合化した「総合危険度」を測定しています。危険度ランクの高い地域にある住宅は特に注意する必要があるでしょう。

ソフト編 イベントや情報提供、入居者の意識を高めることから始める

賃貸住宅の入居者も住人同士の交流を求めている

 過去の災害時の事例を見ると、建物などのハード面だけでなく、ソフト面での防災対策も注目されています。
災害が起きてしまったら、人と人との助け合いが大きな力を持ちますし、このような助け合いがあるコミュニティの醸成は、入居希望者への強いアピールにもなります。
少し古いデータになりますが、2014年にリクルートが行った「賃貸住宅居住者の交流意向調査」によると、70.1%の人が「賃貸住宅内で親しくしている人はいない」と回答している一方で、75.1%の人が「住んでいる集合賃貸住宅内で、他の居住者と交流したい」と回答しています。また、住人同士の交流のためにあったほうがいいイベントや催しとして、「防災訓練・避難訓練」を選んだ人が最も多くなっています。
確かに入居者のなかには防災への意識をほとんど持ち合わせていない人もいるかと思います。しかし、これだけ自然災害が多発しているという状況を考えると、地域で開催される防災訓練や避難訓練などへ入居者の参加を促したり、備蓄品リストに関するチラシを配布したり、啓発活動を地道にやっていくこともオーナーの責務です。

保険の補償内容や特約を確認しておきましょう

万一、所有物件が被災して修復が必要になると、多額の費用がかかります。そんなときに助けになるのが損害保険です。この機会に、オーナーは自分が入っている保険の補償内容や特約について、内容を確認しておくとよいでしょう。
保険について、オーナーは「火災保険」「地震保険」「家賃補償特約」「施設賠償責任特約」に入っておきます。居住者には「家財補償」「借家人賠償責任」「個人賠償責任」をすすめましょう。
火災保険の補償内容は、火災、風災、水災、盗難、水濡れ、破損などがセットされているものがおすすめです。
地震保険は、地震・噴火、またはこれらによる津波を原因とする火災・損壊・埋没または流失による被害を補償する専用の保険です。居住用建物や家財が「全損、大半損、小半損、または一部損」したときに保険金が支払われます。火災保険に付帯する契約となるので、火災保険への加入が前提となります。
家賃補償特約は、たとえば火災が起き復旧に数カ月を要したとき、その間支払ってもらえない家賃の減収を補償します。また、設備の老朽化で水漏れが発生し、居住者の家財を汚損してしまった場合、オーナーが損害賠償責任を負うことになりますが、施設賠償責任をつけておけば補填できます。しかし、地震による復旧は、家賃補償、施設賠償責任とも免責事項になっており補填できません。

二次災害の火災を防ぎ減災を意識する

賃貸住宅において、防災用品等の準備は入居者自身がやるものという考えはもっともですが、近年は入居者目線で賃貸経営に臨むオーナーが増え、オーナーが入居者の防災備品を用意しておくという考えも浸透してきました。どこまで入居者の防災備品を揃えるかは、オーナーや管理会社の判断によりますが、最低限、工具、懐中電灯、乾電池式のスマホ充電器程度は物件に常備したいものです。防災用品にはさまざまなものがありますが、賃貸住宅のオーナーはいざというときに所有物件の入居者や地域の支援に役立つように、しっかりと備えをしておきましょう。一方で、オーナーが取り組むべきことは入居者の防災意識を高めること。共用部の掲示板や投函チラシ等を利用して、近隣の避難場所情報、各自が備えておきたい備品のリストなどの情報を発信し、周知させることが重要です。

防災対策を空室対策へとつなげる

地域で開催される避難訓練への参加を入居者に呼びかけたり、避難情報を恒常的に掲示板に掲出したり、防災にも気配りし対策を講じているオーナーの物件であることは、内見時などで好印象を与え、入居促進策ともなります。また、内見会などを実施する際には、簡易トイレや大判のウェットティッシュなどの防災グッズを、参加の御礼として提供するなど、アイデア次第で防災意識の高い物件であることをアピールすることもできます。無理のない範囲で、検討をしてみてはいかがでしょうか。

次世代の家族と相談をしながら方針決定を

一般の事業では、災害対策の一つとしてBCP(事業継続計画)を準備します。自然災害で被災した場合でも、どのようにすみやかに事業を再開させるか、その善後策を計画しておくことです。賃貸経営も同じような準備が必要です。万が一、被災した場合の、早期復旧計画などはとても重要な事項なので、賃貸経営を引き継ぐ次世代の家族と相談しながら方針を決めていくことが重要です。

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