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見直し!令和の営業マナー&トーク術 

社会全体の価値観や暮らし方が変化する中、営業現場でもこれまでの常識やアプローチを見直す必要性が高まっています。今回の特集では、長年にわたり営業現場に立ち、現在は企業研修の講師としても活躍する、人とデザイン研究所 代表の吉本平史さんに、令和時代の営業マナーとトーク術のポイントを伺いました。

「営業は発表じゃない。会話なんです」 

営業というと、準備した資料をきちんと説明する“プレゼン”のようなものと捉えられがちではないでしょうか?そこで、吉本さんがまず強調するのが「営業は発表じゃない。会話なんです」。
現場で求められるのは、正しい言葉づかいやマナーよりも、相手の様子をしっかり観察し、その場に合った言葉やペースで伝える“対話力”だといいます。表情、声のトーン、視線の動き、そうした小さなサインを敏感に読み取ることが、お客様にとって気持ちの良いやりとりにつながることは、心得ておくべきポイントになるそうです。
吉本さんが指摘するありがちなケースが、「知らず知らずのうちに、お客様を“付き合わせてしまっている”ことがあるのでは?」という場面。特に近年は、暮らし方や働き方が多様化し、生活に余裕がない人も増えています。話し手として一生懸命でも、相手にとっては「長い」「わかりにくい」と感じられている、そんな可能性にも目を向けておく必要がありそうです。 

営業トークのNG例

  • あいまいな言葉:一応、とりあえず、たぶん、おそらく、けっこう
  • 自信のない回答:わからないのにその場をごまかす言葉、屁理屈、回りくどい表現
  • 否定的な言葉:他社や他人の悪口、できません、無理です
  • 専門用語:業界用語、難しい言葉、カタカナ用語・3文字略語
  • 信教、政治、趣味嗜好、ハラスメントになりうる言動 など

Point ”地雷トーク”の回避術

政治や宗教、個人の趣味などは営業トークの”地雷”になりがち。やんわり受け止めるのがコツ!

【例】
「そういう考え方もありますね」⋯⋯相づちは打っても深く入り込みすぎない
「お詳しいですね」「私なんかまだまだです」⋯⋯感心しつつも相手を主役として立てる

だからこそ、“プロの視点で素人の立場に立つ”意識が欠かせないといえます。専門知識があるからこそ、かみ砕いて丁寧に伝える。相手の理解度や関心に合わせた言葉選びや、話す順序の工夫、これが、今求められる営業マナーといえるでしょう。 

「一番になりたい」より「喜ばれたい」 

営業という仕事において、数字や成果はたしかに重要です。しかし吉本さんは、「“一番になりたいからお客様に喜ばれよう”ではなく、“お客様に喜ばれたいと頑張ったら一番になれた”という人が、本当に信頼される営業になる」と話します。
優秀な営業とそうでない営業の違いは、個人のトーク力やセンスにあるのではなく、日々の姿勢と行動にこそ、違いが現れるのだといいます。たとえば、時間通りに訪問する、話を最後まで聞く、話した内容を振り返る——そうした一つひとつの「小さな約束」の積み重ねが、営業としての信頼感をつくっていくのです。 

営業マンが大切にしたい「小さな約束」

「資料を送ります」「●月●日●時に伺います」「また来週ご連絡します」など。
その場でわからないこと・できないことがあっても、中途半端に逃げず「確認して明日までに回答します」という約束をして、これを守ることができれば、お客様の信頼度は大きく変わるはずです。


Point 「小さな約束」をつくるテクニック

「小さな約束」をあえて作るのも手。提案の中で重要度の低い事柄については、あえてその場で提示せず、「近日中に詳しい資料をお持ちします」と言って数日後に持参・送付し、小さな約束を果たす、というのもテクニックの一つです。

「営業スタイルは一つではありません。年齢や経験、性格に応じて、自分らしいやり方を見つけることが大切です」と吉本さん。若手であれば、一生懸命さや素直さが評価される場面も多く、ベテランには提案力や段取りの巧みさといった持ち味を生かすべき、といいます。 

「口下手で、一見とっつきにくい印象を持たれがちな人でも、“お客様のために”という信念を持ち、誠実な行動を積み重ねることで、最終的にはトップ営業として信頼を得た方もいます。私自身、これまでの経験の中でそうした優秀な営業マンを何人も見てきました」。 

非採用時こそ問われる「営業の質」 

営業活動において、どんなに優秀な営業マンでも100%成約に結び付けることは難しく、どれだけ努力してもすべての提案が採用されるわけではありません。
「実際の現場では、むしろ非採用の方が多いのが現実です。だからこそ、“売れなかったとき”の対応が、営業の質を決めるんです」と、吉本さんは言います。
提案を断られた際、曖昧な態度で終わらせるのではなく、「なぜ採用されなかったのか」を丁寧に尋ねることで、次への改善点が見えてきます。また、分からないことは無理にごまかさず、「確認して改めてご連絡します」と正直に伝える誠実さが、次の信頼につながるのです。 

”押しつけ感”のない営業のコツ

  • 対象顧客に近い状況や価値観の他顧客の事例や感想、評価等を会話に入れる
  • 採用時のメリット、非採用時のデメリットを顧客目線でさりげなく話す
  • 自分自身の体験や評価を具体的な事例で組み入れる
  • 顧客にとって本当の価値があるのかをいつも問いかけ、わかりやすく説明する
  • わかりやすく、時間のかからない資料や見本、事例等の紹介
  • 五感を総動員した提案・紹介

Point 複数商材を自然に提案したい

お客様の意識が集中しないので、基本は1回の商談で1商材が無難。ただし、お客様の暮らしを良くするために本当に必要な提案なら、遠慮する必要はありません。

【例】

  • 新しいコンロを検討中のお客様:コンロと相性の良いレンジフード
  • 給湯器の提案中に、家事の悩みを聞けた:ガス衣類乾燥機や食器洗い乾燥機 など

さらに、吉本さんは、営業マンは話すことに重点を置きすぎてしまう傾向があるとしたうえで、“五感に訴える提案”の効果について言及します。
「見て、触って、聞いて、実感できる提案は印象に残りやすいんです。言葉だけで伝えるのではなく、視覚的な資料や実物の展示などで補うことで、お客様の理解や納得感がぐっと高まります」。
さらに、わかりやすい資料があることで、商談後の振り返りや社内での比較検討もしやすくなります。しっかり整えられた資料は、現場での説明ツールだけではなく、次の提案につながる”強力な武器” にもなるのです。

営業とは、「次につながる行動」を積み重ねる仕事、といえそうです。
日々の実践を通して、信頼される営業スタイルを磨いていきましょう。 

吉本 平史(よしもと ひろし)氏

人とデザイン研究所 合同会社 代表
MBA・中小企業診断士 

資生堂他で営業・支店経営・人財育成を担当後、独立。1,600回以上の研修・講演を実施し、5万人以上が受講。どこの会社でもナンバーワンになってきた実績を持つ営業のプロフェッショナル。