保安だより
本格的な冬季シーズンの到来に向け、LPガス設備に関わる雪害事故の防止策をあらためて取り上げます。あわせて、寒冷地以外の地域でも発生しやすい冬場のトラブルとして、給湯器の凍結対策と対処法についても改めてまとめました。 地域や気象条件に関わらず、ポイントを整理して冬場に備えましょう。

2025年12月1日
2024年度に雪害事故が発生した地域は4件あり、全て豪雪地帯等で発生しています。なお、雪害4件は、落雪により高圧ホース(2件)、調整器(1件)、マイコンメータ(1件)が損傷した事故でした。
気象庁の発表では、2024年は平年より気温が高く、降雪と融雪が繰り返されたとされています。その影響で落雪が起こりやすく、供給設備の損傷につながる恐れがあると考えられるため、引き続き雪害対策を徹底する必要があります。


出典:高圧ガス保安協会「LPガス事故事例の原因等の分析等調査」
雪害事故の多くが調整器や高圧ホース等の供給設備の損傷であることから、落雪の影響を受けない場所、容器交換が容易に行える場所に設置します。
また、隣家の落雪による影響についても考慮しなければいけません。

ガス配管の横引き部分は積雪面の上か、軒下や出窓下などに設置します。
豪雪地では軒下でも危険な場合もあり、雪囲いの内側に入れるか、強度のある架台の上などに設置します。
ガスメータは雪囲い、容器収納庫の中に設置するか、雪の影響が少ない軒下に設置します。

雪害事故は寒冷地に多く見られますが、寒冷地以外でも冬季シーズンを迎えるにあたり注意すべき点があります。寒い時期に起こるガス給湯器の凍結は、豪雪地帯などの寒冷地では普段から予防策が取られていますが、比較的温暖な地域でも発生するトラブルです。
普段は凍結とは無縁と思っていても、急な寒波の影響などで給湯器が凍結することがあります。

なぜガス給湯器の凍結が困るのか、どの部分で起きやすいのかといったポイントに加え、対処法についても解説します。
給湯器の凍結は、気温が下がり、配管内部の水が凍ってしまうことが原因です。凍結が起こると、管に水が通らなくなるため、給湯器を使用できなくなります。
そして、水は凍ると体積が膨張するため、凍結によって配管が破損してしまうことがあります。こうしたトラブルを防ぐためにも、事前の対策が欠かせません。

現在の給湯器には、外気温が下がった際に本体内部を自動で保温するヒーターが搭載されているものも多く、機器本体には一定の凍結対策が施されています。
つまり、実際に凍結が起こりやすいのは本体ではなく周辺の配管部分であることを、改めて押さえておく必要があります。

本体内部にヒーターがあっても、外部の配管までは凍結防止の働きが及びません。特に接続部分は金属製であることが多く、冷気の影響を受けやすいため凍結することがあります。
もっとも凍結が発生しやすいのが給水配管です。水が通るため外気温の影響を受けやすく、また、水温も下がりやすいため、凍結リスクが高い箇所といえます。
凍結が発生することはありますが、給水配管に比べると水温が高いお湯が通るため、凍結が比較的に起こりにくい箇所です。
凍結予防ヒーターは、配管部分の凍結までは防ぐことができないため、あらかじめ対策を採ることも必要です。
– 浴室水栓からお湯を細く出しておく
蛇口から少量(400㏄/1分間程度)の水を細く流し続けることで、水が動いた状態になり、凍結の防止に効果があります。冷え込みが予想される夜におすすめの対策です。
その際、給湯器のリモコンは運転を切り、給湯器のガス栓も閉めておきます(※ガス給湯暖房熱源機をご使用の場合は、ガス栓を閉める必要はありません)。

また、サーモスタット式水栓をご使用の場合は、水を流す際にサーモスタットを最高温度に設定します(※再使用時は設定温度の戻し忘れにご注意ください)。
– 電源プラグを抜かない
凍結予防ヒーターは、外気温が下がると自動で作動するしくみのため、電源は必ず入れたままにしておきます。
– 水抜きをする
凍結の可能性が高いときや、旅行などで長期間家を空ける場合は、水抜きが有効です。
以下が基本的な手順ですが、給湯器の取扱説明書に記載されている方法で適切に実施しましょう。
対処法 お湯を早く出したい時
凍結してしまった場合、本来は運転スイッチをオフにし、気温の上昇による自然解凍を待つのが最も安全です。スイッチをオンにしたままだと、状況によっては燃焼してしまう可能性があります。
ただし、どうしてもすぐにお湯を使いたい場合は、次のような応急処置を行うことができます。

– 給水元栓が回るが水が出ない場合
→ 自然解凍を待つ
給水元栓以外のどこかで凍結している可能性があります。元栓を閉めた状態で自然解凍を待ってください。
気温が上がってもしばらく水が出ない場合は、給湯器メーカーへお問い合わせください。
– 給水元栓が凍結して回らない場合
→ ぬるま湯による処置

⚠️
凍結時、無理に対応すると給湯器本体や配管が故障・破損し、修理や交換が必要になる場合があります。
時間はかかりますが、安全のためにも気温の上昇などによる自然解凍を待つことが推奨されています。
– 凍結した配管や部品に熱湯をかける
早く解凍したいからといって熱湯をかけてはいけません。急激な温度変化によって、機器や配管が破裂する恐れがあります。

– ぬるま湯をかけたあと拭き取らず放置する
応急処置としてぬるま湯をかけた場合、拭き取らずにそのままにしておくと、残った水が再び凍りつき、凍結を招く原因になります。ぬるま湯で処置した際は、周囲の水分を必ず丁寧に拭き取ってください。
「配管カバー」のメリット
配管カバーは外観の改善だけでなく、設備の保護や凍結予防など、実用的なメリットがあります。
⚫︎外観(見栄え)が良くなる
⚫︎配管の汚れ・劣化を防ぐ
⚫︎凍結・破損リスクの低減に効果

⚫︎参考情報
給湯機器メーカーも、凍結対策に関する情報を提供しています。ぜひ参考にしてください。
リンナイ:https://rinnai.jp/products/waterheater/freeze/
ノーリツ:https://www.noritz.co.jp/aftersupport/disaster/cold_wave.html
パロマ:https://www.paloma.co.jp/news/attention/frozen.html