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新入居者に寄り添う空室対策のヒント
いつの時代も、単身者は賃貸住宅の大きなターゲットです。進学や就職、転勤など、若い世代のライフイベントで、新居として選ばれるためには、彼らの考え方や志向を理解しておかなければなりません。今回は「Z世代」と呼ばれる新入居者のライフスタイルと賃貸住宅市場における新サービスのトレンドについて見ていきましょう。

2026年1月30日

「Z世代」とは1990年代後半から2000年代に生まれた世代を指すことが多いようです。つまり、生まれたときからインターネットが普及しているデジタルネイティブとしては最初の世代です。テレビを見ない若者が増えたとはよく言われますが、ネット上で必要な情報は入手でき、YouTubeやInstagramなどのSNSが最も中心的な情報源となっている彼らにとってはテレビや新聞などのメディアは必要ないのです。スマートフォンを日常的に使いこなす「スマホ世代」であり、パソコンさえ必要ないのかもしれません。
そんなZ世代はどんな部屋選びをしているのでしょうか?賃貸仲介会社のハウスコムは、Z世代の男女のうち1年以内(2022年4月以降)に賃貸物件に引っ越しをした、または今後1年以内(2024年4月まで)に引っ越し予定の587人にネットアンケート『2023年度“部屋選び”に関する調査』を実施。SNSを駆使し、自分のライフスタイルに合う部屋を探す彼らの様子が見えてきました。
Z世代が情報源として普段から利用しているメディアは、「SNSいずれか」と回答した人が合計66.4%となり、圧倒的多数。3位の「テレビ」も44.0%で、若者はテレビを見ないといわれるよりも、実際にはよく見られているようです。「WEBニュースサイト」も29.1%となりました。
「SNS」は「YouTube」(50.1%)、「Instagram」(46.8%)、「X(旧Twitter)」(43.8%)、「TikTok」(23.2%) の順に利用率が高く、特に「YouTube」は半数が利用しています。男女別では、男性は「YouTube」(51.2%)が1位であるのに対し、女性は「Instagram」(56.6%)が「YouTube」(49.0%)より多いという結果も出ました。
また、部屋選びの際に利用したメディアや情報源は、「物件検索ができるウェブサイト(※1)」が60.5%で、2位の「物件検索ができるアプリ(※2)」(31.7%)と合わせて、物件検索サイトやアプリの利用率が極めて高いという結果も。一方、「SNSいずれか」を回答した人は16.0% で、3位「店舗」(19.9%)に次いで活用されています。今後、Z世代では、部屋選びにおいてもさらにSNSの活用が加速していくという可能性が高まってきました。

※1 SUUMO 、 LIFULL HOME’S 、 athome 、アパマンショップ、いい部屋ネット、ハウスコムなど
※2 ニフティ不動産、 SUUMO 、 LIFULL HOME’S 、 athome 、 アパマンショップ、いい部屋ネット、ハウスコムなど
半数以上のZ世代がYouTubeを情報源としているなかで、部屋選びに「物件紹介動画を参考にしたことがある」と回答した人は「Z世代全体」では43.4%、部屋選びに「SNSいずれか」を利用した人では67.0%と、高い数字になっています。また、物件紹介動画を参考にした人に「参考になった情報」を、Z世代全体に「物件紹介動画に期待する情報」を聞いたところ、1位はどちらも「駅からの道のりの様子」(参考になった32.9%、期待52.0%)で、多くの人が知りたい情報であることがわかりました。2位は「部屋の広さ」、3位は「部屋の中の動線」で、具体的な部屋の中の様子が情報として参考になったようです。Z世代は2位に「エアコンやトイレなどの設備の状態」46.2%が挙がっており、より細かくリアルな情報を期待していることがうかがえます。

※テレビのアンテナ端子/固定電話やネット回線の端子の場所など
ハウスコムでは2024年度も同様の調査を実施し、2023年度の調査と比較ができるようになっています。2024年5月31日~6月4日、インターネットで実施した調査によると、家での過ごし方は1位の「料理をする」(58.0%)を筆頭に、前年度の結果と同様の傾向がうかがえました。2位「テレビや動画、映画鑑賞」(51.3%)は前年から3.5ポイント、6位「仕事/勉強」(30.2%)は2.1ポイント微減しています。一方、4位「ゲーム」(37.8%)は2.8ポイント微増しています。

前述のハウスコムは2022年度から部屋選びに関する実態調査を実施。2023年度からはZ世代に特化した設問も追加しています。2024年度の同調査によると、部屋選びや家具・家電選びの際、「家賃や光熱費、水道代などの費用に対して得られるクオリティ(コスパ=コストパフォーマンス)を意識したか/しているか」を聞いたところ、「意識していた/する」と回答したZ世代は92.5%、Z世代以外は88.1%でした。「部屋選びや家具・家電選び、移動や家事にかかる時間に対して得られる生産性(タイパ=タイムパフォーマンス)を意識したか/しているか」では、Z世代の88.1%、Z世代以外の80.1%が「意識していた/する」と回答。また、「部屋の限られた空間に対して得られる利便性や快適さ(スペパ=スペースパフォーマンス) を意識したか/しているか」の問いに、「意識していた/する」と答えたのは、Z世代では84.8%、Z世代以外では80.7%でした。
つまり、Z世代の部屋選び、家具・家電選びは、かけた費用に対する効果など、「お金・時間・空間」の効率を追求する意識が特に高いことがわかりました。特に、コスパへの意識は高く、好きなものにお金や時間を惜しみなく投資する一方で、無駄なものにはコストをかけたくないと考えている人が多く、「失敗したくない意識」の表れだとハウスコムは推測しています。その傾向は日常生活でも顕著で、家事や移動も無駄を避け、省略しても支障がないものはやらない、同時にできることは同時にやる意識が強いと思われます。それでは、そんなZ世代の価値観に見合って人気が出てきた賃貸住宅の各種サービスについて見ていきましょう。
Z世代に限らず、「水道光熱費に変動があると毎月のお金のやりくりがタイヘン」と思っている人は少なくないはず。もし共益費に水道光熱費が含まれるということになれば、費用を支払う負担が減るため、入居者からはお得と感じてもらうことができ、入居につながる可能性があります。つまり、直接的には家賃を値下げせずに空室対策が打てるわけです。
総務省統計局「家計調査年報(家計収支編)」によると、2023年の単身世帯の1カ月あたりの水道光熱費平均額は13,044円であり、その内訳は以下の通りです。
水道代(上下水道料):2,239円/ガス代:3,359円/電気代:6,726円/その他光熱費(灯油、薪など):720円
もちろん、年齢や性別、ライフスタイル、住んでいる地域や使用しているガスの種類(都市ガスかLPガスか)などによって、世帯ごとに支出金額は大きく異なります。ですが、水道光熱費が毎月一律でないからこそ、共益費に含むメリットが出てくるわけで、その設定をしっかり計算しておけばオーナーが損をする可能性は低いと言えます。収支に支障がないようにコストを設定し、近隣のライバル物件に対して強みを発揮できるようならば空室対策のひとつとして検討してみるのもいいでしょう。

リモートワークが可能になり働き方の自由度が増していることに伴って、多拠点居住という新しいライフスタイルを志向する人たちも増えてきました。初月9,800円から多拠点生活ができる住まいのサブスクサービスを提供するADDress(アドレス)など、新しい“住まい方”を提案する会社も注目されています。
同社は国内外に300カ所以上の物件を提供する住まいのサブスクサービスを展開。全国の空き家・空き部屋などを同社が賃貸で借り受け、同社の会員に二拠点・多拠点居住用住宅として貸し出しをしています。一棟貸し切りではなく、シェアハウス型の住まいで、同時に複数の会員が滞在する交流型住宅であることが特徴です。また、各家には「家守(やもり)」と呼ばれる管理者がいて、会員同士や地域と会員をつなぐ役割を担っています。空き家対策としても、また家守がいることで、観光滞在だけでは得られない地域情報や地域とのつながりをつくることができると注目をされています。
「初めての一人暮らし。引っ越しだけでもたいへんなのに家具や家電を買いそろえるとなるとお金も時間もかかって大変」などのニーズに応えるために、家具や家電付きの賃貸物件が増加しています。また、家具や家電のサブスク(サブスクリプションの略)サービスや「長期リース型サブスク」も広がっています。ご自身の物件を家具や家電付きにするという選択もありますが、サービスが多様化しているこれらレンタルサービスの活用を入居者に勧め、引っ越しの初期費用の負担を軽くする方法も有効かもしれません。
家具と家電のレンタル・サブスク「CLAS」が実施した「春の新生活の家具・家電事情2024」では、サブスクの中でも長期にわたって利用する「長期リース型サブスク」を利用している人が11.7%という結果になりました。回答者の年代は20代(13.8%)と30代(14.3%)が10代や(10.0%)や40代(6.7%)よりも多くなっており、この年代に耐久消費財を所有しない傾向があるということがわかってきました。
また、高額な家具・家電を使いたいとき「いきなり買うのは不安。一定期間使って試したい」という「必要な期間だけ使えるコスパのよさ」をメリットに感じているという声もありました。
若い世代を中心に、生活の中で賢くサブスクサービスを利用している様子がうかがえます。しかし、レンタルでは新品とは限らないこと、好きな家具・家電がレンタルできるとは限らないこと、長く使うとかえって割高になることなどのデメリットもあることを知っておきましょう。

社員寮や社宅であれば食堂や食事付きというサービスはありますが、昨今賃貸住宅でも「食事付き」という物件が注目されています。「SUUMOジャーナル」2024年3月29日付記事によると、神奈川県相模原市にある東郊住宅社は同社が管理する物件の入居者のための食堂「トーコーキッチン」を運営。2015年のオープン以来、毎日朝8時から夜8時まで、朝食を100円、昼食・夕食を500円という格安な価格で提供しています。借りている自分の部屋のカードキーで食堂に入るシステムです。
東郊住宅社は40年以上にわたりJR横浜線・淵野辺駅周辺にあるアパート、マンションなどの賃貸物件を管理している、いわゆる“街の不動産屋さん”。淵野辺には、青山学院大学、麻布大学、桜美林大学の3つの大学があり、1人暮らし用のワンルームを多く管理していることから、食堂の経営を検討。「しっかり栄養を摂れる食生活が送れるのか」という家族の心配や不安を、入居者サービスの一つとして解決できないかと考え始めたことがきっかけだったそう。
街に自分たち専用の食堂があるという安心感がある魅力的な仕組みによって東郊住宅社の管理物件は入居希望者が増加。学生はもちろん、淵野辺の拠点を移した社会人も増え、地域住民も巻き込んだリアルなコミュニケーションの場として活用されるようになったようです。

新入居者、特にZ世代と呼ばれる若い世代について、さまざまなデータや事例を見てきました。自分の「推し」や好きなものにお金や時間を使いたいので、無駄なものにはコストをかけたくない、何事にも「コスパ」や「タイパ」を求めることもわかってきました。また、ITリテラシーが高く、SNSを介しての情報収集、情報発信、人とのつながりを得意とする面もあり、生活全般で人とのコミュニケーションを重視している人も多いように見受けられます。
Z世代に限ったことではないですが、賃貸住宅のオーナーはさまざまな機会で入居者とのコミュニケーションを図り、常に入居者のニーズを探る必要があります。より安定した賃貸住宅経営は良好なコミュニケーションにあるようです。
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