業界情報

高市首相も注目の「ペロブスカイト太陽電池」
LPガス+再エネの新たな提案視点

次世代太陽電池として注目を集める「ペロブスカイト太陽電池(PSC)」。政府もエネルギー安全保障強化の観点から、「国産エネルギーの切り札」として推進姿勢を強めており、高市早苗首相もその重要性に言及しています。 そこで今回、太陽光発電協会(JPEA)に取材し、ペロブスカイト太陽電池の現状と今後の見通しについて伺いました。

話題の新技術の現状と課題

ペロブスカイト太陽電池には、大きく分けてフィルム型、ガラス型、そしてシリコンと組み合わせたタンデム型の3種類があります。中でも特に注目されているのが、軽量で柔軟性を持つ「フィルム型」です。従来のガラス基板を用いたシリコン型とは異なり、薄くて曲面にも対応できるため、壁面やカーブした屋根など建材と一体化した設置が可能になると期待されています。これまで太陽光パネルの導入が難しかった場所にも展開できる点が、ペロブスカイトならではの大きな特徴です。 

ただし、技術的にはまだ発展途上です。実証実験は2023年頃から環境省・経産省の支援のもと進められています。顧客限定での商用生産も見受けられますが、一般向けの生産はまだ先になります。
JPEAによれば、発電の変換効率はモジュールベースで15〜18%程度となっており、中には20%に達するものも登場しているということです。しかしながら、さらなる高効率化を追求する場合、材料に「鉛(なまり)」が含まれるという課題が残ります。環境負荷を考慮した「鉛フリー化」と「高効率化」の両立は、依然として実証・検証の途上にあります。
そして、最大のネックは「耐久性(寿命)」です。シリコン型が20〜25年持つのに対し、ペロブスカイトは現状10年程度で、長期安定性の検証が続いている段階だといいます。
実際、政府は次世代型太陽電池戦略の中で、2030年までに1GW級の量産体制を目指し、2040年度には累計20GW規模の導入を見据えています。つまり、話題性は高まっているものの、導入が本格化するのは2040年頃が現実的なラインとされ、普及にはなお一定の時間を要すると見られています。 

市場への影響
——まだまだ主流はシリコン型  

ペロブスカイトの登場により、既存の太陽光パネルとの関係が注目されています。しかし、耐久性や実績のあるシリコン型は今後も引き続き主要な選択肢となるようです。ペロブスカイトの活用が期待されるのは、これまで太陽光パネルの設置が難しかった場所の開拓です。荷重に懸念のある古い工場や倉庫の屋根、ビルの壁面(ファサード)、体育館のかまぼこ型の曲面屋根など、フィルム型ならではの薄さ・軽さ・柔軟性を生かせる場面が想定されています。 
学校の体育館屋根への設置などは、分かりやすい例の一つです。ペロブスカイトはまず、モデル事業・実証の舞台になりやすい学校や体育館、公民館などの公共施設から導入が進む可能性が高いと考えられます。地域の自治体がどの施設で導入を検討しているか、動向を注視することが次の展開を見据えるうえでのポイントになりそうです。 

2025年 大阪・関西万博の夢洲第1交通ターミナルで設置実証が行われた 

このように、ペロブスカイトの登場は既存市場の置き換えというよりも、再エネ導入箇所そのものの拡大(補完)を意味すると考えられます。再エネの導入余地が広がることは、地域のエネルギー供給を考える上でも大きな変化となるでしょう。 

出典:経済産業省『次世代型太陽電池戦略』令和6年11月資料 

分散型エネルギーの強みを生かした提案を   

では、LPガス販売事業者にとってペロブスカイトをどのように位置づけるべきでしょうか。
JPEAへの取材を通じて得られたポイントの一つは、「分散型エネルギーの考え方として、太陽光と蓄電池を軸にしながら、熱需要や非常時のバックアップとしてガス機器を組み合わせるのが合理的」ということです。地域・住宅レベルで「太陽光+蓄電池+ガスコージェネ」という構成は、レジリエンスと快適性の両立策として有効だといいます。

太陽光発電は日照時間にしか発電できず、天候にも左右されるという特性があります。蓄電池によって一定の補完は可能ですが、長期停電や悪天候が続く場合には限界もあります。こうした中で、非常時に自立的に供給できるLPガスは、分散型エネルギーのバックアップとして重要な役割を担い続けられると考えられます。給湯機器やコージェネレーションシステムの活用を通じて、電力だけに依存しないエネルギー構成を提案することが可能になるはずです。 
今後はさらに加速して「ガスだけ」ではなく、太陽光・蓄電池・高効率給湯器などを組み合わせたトータルなエネルギー提案が求められるようになるといえます。顧客の家のエネルギーを“まるごと”支える視点が鍵となるでしょう。

地域の「エネルギー・ハブ」に
なるために

ペロブスカイトの登場は、住宅・店舗・公共施設などを問わずこれまで太陽光パネルの設置をあきらめていた建物などにも提案余地が生まれることを意味します。 
つまり、新たなエネルギー提案ができる時代が近づいているといえます。
さらに、新技術が普及したときに最後に必要なのは、設置・施工、その後のメンテナンスまでを担える人手です。

LPガス販売事業者は、日頃から顧客宅に入り込み、保安と信頼を積み重ねてきた存在です。さらに、災害時にLPガスが「最後の砦」として機動力を発揮する点も大きな強みです。防災の観点からも、地域密着のエネルギー事業者が果たす役割は今後さらに重要になります。
この点について、JPEAも「分散型電源の普及には、地元に根差した事業者が不可欠。顧客との信頼関係を持つLPガス販売店さんは、トータルエネルギー提案のハブになれる」と期待を寄せています。
ペロブスカイト本格普及までの約15年は、LPガス販売事業者が地域の総合エネルギー事業者へと進化する準備期間ととらえていいでしょう。地域密着で築いてきた信頼は、新技術の時代にも変わらない強みです。新しい選択肢を取り入れながら、暮らしのエネルギーを“まるごと”支える存在として提案力を高めていくことが期待されます。 

一般社団法人 太陽光発電協会(JPEA) 

1987年に設立された「太陽光発電懇話会」を母体とし、2009年の一般社団法人化を経て、40年近くにわたり日本における太陽光発電の利用技術の確立と普及促進を担い続けている業界団体。太陽光発電システムに関連するメーカー、施工、販売、さらには学術機関や自治体など、業界の全レイヤーを網羅する会員企業・団体で構成され、太陽光発電産業の健全な発展を通じて、我が国経済の繁栄と国民生活の向上に寄与することを目的として活動している。