2025年4月、新築住宅で省エネ基準への適合が義務化され、住宅の省エネ政策は新たな段階に入りました。さらに、2027年4月からは、エネルギーマネジメントを一段と強化した「GX ZEH」「GX ZEH-M」の新定義が適用されます。住宅全体でエネルギーを効率的に使うことが求められる中、これからのガス事業者に求められる役割を考えます。
2026年7月30日
2025年4月から、同月以降に着工する原則すべての新築住宅・非住宅で、省エネ基準への適合が義務化されました。さらに国は、2030年度以降に新築される住宅について、ZEH水準の省エネ性能の確保を目指し、省エネ基準を段階的に引き上げる方針です。こうした流れの中、2025年9月に「GX ZEH」「GX ZEH-M」の新定義が定められ、2027年4月から適用されます。
なお、「GX志向型住宅」と「GX ZEH」は別の制度です。断熱等性能等級6や、再生可能エネルギーを除く一次エネルギー消費量の35%以上削減など、共通する性能水準はありますが、制度上の位置づけや認定の仕組みは異なります。

出典:経済産業省 資源エネルギー庁「更なる省エネ・非化石転換・DRの促進に向けた政策について」

ZEHは、断熱性能を高め、高効率設備によって消費エネルギーを減らしたうえで、太陽光発電などを導入し、年間の一次エネルギー消費量の収支を正味ゼロ以下にすることを目指す住宅です。GX ZEHでは、この考え方を引き継ぎながら、断熱・省エネ性能と再生可能エネルギーの自家消費をさらに強化します。


戸建住宅は「GX ZEH」「GX ZEH+」「Nearly GX ZEH」「GX ZEH Oriented」に区分されます。GX ZEHは再生可能エネルギーを含めた一次エネルギー消費量を100%以上115%未満削減し、GX ZEH+は115%以上削減して年間収支をマイナスにする住宅です。
断熱性能は、現行ZEHの原則等級5から等級6以上へ、再生可能エネルギーを除く一次エネルギー消費量は20%以上削減から35%以上削減へ引き上げられます。BEIでは0.80以下から0.65以下への強化です。冷暖房、換気、給湯、照明を含め、建物と設備の両面から住宅全体の消費量を抑えることが求められます。




戸建住宅では、HEMSなどを用いて発電量やエネルギー使用量を把握し、冷暖房・給湯設備などを制御する高度エネルギーマネジメントが必須となります。また、「GX ZEH」「GX ZEH+」「Nearly GX ZEH」では、初期実効容量5kWh以上の蓄電池が必要です。
一方、再生可能エネルギー設備を要件としない「GX ZEH Oriented」では、蓄電池は必須ではありません。集合住宅の「GX ZEH-M」には、戸建住宅と同じ設備要件は一律には設けられていません。Orientedの対象は、戸建住宅では多雪地域または都市部狭小地、集合住宅では多雪地域または住宅用途部分が6階建て以上の住宅です。現行定義による新規取得は2028年3月まで可能で、取得済みの定義はその後も使用できます。集合住宅では、最長2030年まで、一定の角住戸などを対象とする断熱性能の経過措置も設けられています。


GX ZEHは、住宅で使用するエネルギーを電気に限定する制度ではありません。ただし、エネファームなどのガス機器による発電は再生可能エネルギーではないため、設置するだけでGX ZEHの再生可能エネルギー要件を満たすわけではありません。
ガス設備に期待されるのは、エネファームやハイブリッド給湯器などにより、高効率な給湯や熱電併給によって、住宅全体の一次エネルギー消費量を抑える役割です。
しかしながら、設備を組み合わせれば一律に省エネや光熱費削減につながるわけではなく、家族構成、給湯量、電気の使用時間帯、太陽光・蓄電池の容量、料金体系などを踏まえた試算が必要です。また、GX ZEHの高度エネルギーマネジメントに対応するには、給湯・冷暖房設備がHEMSから制御できるか、通信規格を含めて確認する必要もあります。

GX ZEH時代には、ガス機器を単体で販売するだけでなく、太陽光発電、蓄電池、HEMS、空調、給湯を含めた住宅全体のエネルギーシステムを考える視点は不可欠といえます。住宅会社や工務店との計画段階から関わり、断熱性能や一次エネルギー消費量の計算を踏まえて、適切な設備構成を提案することが重要です。自社だけで対応が難しい場合は、電気工事事業者や太陽光・蓄電池事業者との連携も必要になります。
「ガスを残すため」の提案というよりは、省エネ性能、使い勝手、導入費、維持費、レジリエンスを総合的に比較し、その結果としてガス設備の価値を示すことが求められるようになるでしょう。
災害時の価値についても、条件を正確に伝える必要があります。蓄電池は容量や配線方式によって使用できる機器や時間が異なり、太陽光発電の自立運転も天候や時間帯に左右されます。エネファームの停電時発電も、対応機種であることに加え、停電発生時の運転状況やガス・水道の供給など、一定の条件が必要です。


LPガスは、需要先ごとに貯蔵でき、運搬もしやすい分散型エネルギーです。災害時の炊き出しや給湯、仮設住宅への供給にも活用されてきました。ただし、ガス機器でも電気や水を必要とするものがあるため、供給方法だけでなく、機器の使用条件まで確認したうえでの提案が前提となることを踏まえておくべきです。
住宅エネルギーは、設備ごとの省エネから、住宅全体でエネルギーをつくり、ため、制御する方向へ進みます。その中でガスが担うのは、太陽光発電に代わる役割ではなく、高効率な給湯、熱電併給、再生可能エネルギーとの連携、災害時のエネルギー源の多重化です。
GX ZEHを電化だけの動きと捉えるのではなく、住宅の省エネ性能とエネルギーの自立性を高めるために、ガスをどこで、どのように組み合わせるか。住宅全体を見据えた具体的な提案力が、これからのガス事業者の価値を左右するといえるでしょう。